ダイレクトボンディングの寿命は一律の年数では決まらず、研究では前歯の詰め物の9割以上が10年たってもやり直しをせずに済んでいました。寿命を左右するのは、むし歯のリスクや歯ぎしりといった口の中の条件と、欠けや変色を小さいうちに補修できるかどうかです。
ダイレクトボンディングは、歯科用の樹脂(コンポジットレジン)を歯に直接盛り足して形や色を整える治療で、虫歯の白い詰め物と同じ系統の材料を使います。そのため保険の白い詰め物の情報と混同されやすく、「すぐだめになるのでは」と迷う方も少なくありません。
本記事では、前歯と奥歯の研究の数字、寿命を縮める要因、長持ちさせるケア、欠けや変色の補修を順にお伝えします。なお、本記事は一般的な情報で、お口の状態の診断の代わりにはなりません。
この記事の監修者
医療法人貴翔会 理事長
はまさき歯科クリニック 院長
濵﨑 貴光Takamitsu Hamasaki
略歴
- 熊本県立熊本高等学校 卒業
- 広島大学歯学部 卒業
- 熊本市民病院・歯科 勤務
- 医療法人伊東会伊東歯科医院 勤務(現 伊東歯科口腔病院)
- 福岡市内の歯科医院 院長として勤務
- 熊本大学医学部麻酔科・九州大学病院歯科麻酔科 研修
- 名古屋市のざき歯科クリニック 勤務
- 長谷川亨歯科クリニック 勤務
- はまさき歯科クリニック 開院
- 医療法人貴翔会 理事長就任
資格・所属学会
- 日本口腔インプラント学会
- 日本歯周病学会
- 日本歯科麻酔学会
- 日本臨床歯周病学会
- 日本歯科審美学会
- 日本スポーツ歯科医学会
- 日本スポーツ協会公認 スポーツデンティスト
- 歯科医師臨床研修指導医
- 日本ティップエッジ矯正研究会
この記事でわかること
- 研究で見るダイレクトボンディングの寿命と10年後の目安
- 前歯と奥歯で寿命の考え方が違う理由
- 寿命が短い・すぐ変色すると言われる理由と実際
- 寿命を縮める要因と、長持ちさせるケア
- 欠けや変色が出たときの補修とやり直しの考え方
目次
- 研究で見るダイレクトボンディングの寿命と10年後の目安
- 前歯と奥歯で寿命の考え方が違う理由
- 寿命が短い・すぐ変色すると言われる理由と実際
- 寿命を縮める4つの要因
- 長持ちさせるための6つの習慣
- 欠けた・変色したときの補修とやり直しの時期
- セラミックとの寿命の違い
- 当院のダイレクトボンディングの費用と長く使うための取り組み
- よくある質問
- ダイレクトボンディングのご相談ははまさき歯科クリニック こども矯正歯科へ
- 参考文献
研究で見るダイレクトボンディングの寿命と10年後の目安

ダイレクトボンディングが何年もつかは、前歯か奥歯か、どんな治療かによって変わります。研究の数字は、部位・治療内容・観察期間・数字の種類をそろえて見ることが大切です。
まず、数字の読み方を確かめておきましょう。研究でいう「失敗」は、多くの場合やり直しや補修が必要になったことを指し、歯を失ったことではありません。年間失敗率は、1年あたりにやり直しなどが必要になった割合の平均で、年数を掛けて10年分を出せる数字ではありません。
前歯の詰め物を調べた21研究の海外のメタ分析(複数の研究をまとめて分析した研究)では、10年たってもやり直しをせずに済んでいた割合の推定中央値が、歯と歯の間の詰め物で95%、前歯の角を含む修復で90%でした。
ただし21研究の多くは2001年より前に始まった研究で、今の材料での成績を約束する数字ではありません。
歯の形を整える・すき間を閉じる盛り足し176本を5年間調べたドイツの大学病院の研究では、トラブルなく経過した割合が84.6%でした。欠けなどの不具合が出た30本も、すべて補修されて口の中に残っていました。
奥歯の詰め物2,816本を5年以上追った12研究を統合した海外の分析では、年間失敗率が5年時点で1.8%、10年時点で2.4%でした。
いずれも研究に参加した人たちの平均的な結果で、当院の治療成績ではなく、1本ずつの歯の寿命を約束するものでもありません。個人差が大きいことを前提に、自分の歯に近い条件の数字を目安にしてください。
前歯と奥歯で寿命の考え方が違う理由
前歯と奥歯では、やり直しになる主な理由が違います。前歯は欠け(破折)、奥歯は境目の虫歯と欠けが中心です。
では、虫歯にならない樹脂がなぜやり直しになるのでしょうか。修復物そのものの問題(欠ける、すり減る、表面に色が付く)と、境目の自分の歯の問題(二次う蝕と呼ぶ詰め物の境目の虫歯、神経のない歯のもろさ)に分けて考えると、理由が見えてきます。
前歯のメタ分析では、前歯の角を含む修復の作り直しの主な理由は修復物の大きな欠けで、境目の虫歯は少数でした。噛む力を受けやすい角の部分ほど、欠けに注意が必要です。
奥歯の統合解析では、失敗の主な原因は虫歯と破折で、詰め物がかかる歯の面が1面増えるごとに失敗のリスクが30〜40%高くなりました。
前歯の表面をレジンで覆うダイレクトベニア196本を調べたブラジルの歯学部の研究では、平均3.5年の使用で80.1%が使い続けられていました。年間失敗率は、神経のある歯で4.9%、神経のない歯で9.8%でした。
自分の治療が前歯の角を含むものか、奥歯の何面にかかるものか、神経のない歯かを知っておくと、寿命の目安を当てはめやすくなります。
寿命が短い・すぐ変色すると言われる理由と実際
「寿命が短い」「すぐ変色する」という情報の多くは、出典が示されていない年数や、条件の違う数字の混同によるものです。よく見かける「レジンは2〜3年」という年数にも、根拠となる研究が示されていないことがほとんどでした。
国内で近い数字としては、岡山市と名古屋市の10歯科医院でやり直しが必要と診断された修復物を調べた1995年の調査があり、レジンの平均使用年数は5.2年でした。
ただし、やり直しになったものだけの平均で、すべてのレジンの平均寿命ではありません。30年以上前の材料と治療法の数字でもあります。
2008年の国内の研究では、一般歯科医院で奥歯に入れたコンポジットレジンの10年生存率が60.4%で、再治療の原因の78.2%が2次齲蝕(境目の虫歯)でした。海外の研究とは時代・対象・数え方が違うため、横に並べて比べることはできません。
変色はどうでしょうか。日本補綴歯科学会の質問箱は、レジンは長年の使用で変色することがあると説明しています。色の変化には表面の着色、境目の着色、材料そのものの変色があり、表面の着色は研磨や部分的な補修で対応できる場合があります。
当院のダイレクトボンディングでは保険のコンポジットレジンより変色しにくい素材を使っていますが、適切なセルフケアと定期的なクリーニングが前提で、変色しないわけではありません。
寿命を縮める4つの要因

寿命を縮める主な要因は、むし歯のリスク、歯ぎしり・食いしばり、神経のない歯、強い衝撃や前歯で硬い物をかじる習慣の4つです。奥歯の研究34件を見た海外のレビューは、長期の失敗の主な理由を境目の虫歯と破折とし、材料の性質の影響は小さいとまとめています。
1つ目のむし歯のリスクについて、奥歯の統合解析では、10年時点の年間失敗率がリスクの高い人で4.6%、低い人で1.6%でした。境目に歯垢が残りやすい人ほど、境目の虫歯でやり直しになりやすくなります。
2つ目の歯ぎしり・食いしばりでは、奥歯の詰め物306本を10〜18年後に調べた開業歯科医院での研究で、噛む力の負担が大きい人の失敗の主な理由が破折でした。
3つ目の神経のない歯は、前の見出しで紹介したダイレクトベニアの研究で、神経のある歯より年間失敗率が高くなっていました。
4つ目は強い衝撃や、前歯で硬い物をかじる習慣です。当院でも、強い衝撃がかかると割れる可能性があることをリスクとしてご説明しており、前歯で氷や硬い物をかじる習慣は控えてください。
材料の質や治療の技術、喫煙や食習慣も影響しますが、ご自身で変えやすいのは歯みがき、噛み方、検診の受け方です。
長持ちさせるための6つの習慣

長持ちさせるには、境目に汚れを残さない毎日のケアと、小さな異変を見つける定期検診の両方が欠かせません。
歯みがきでは歯ブラシの毛先を修復物と歯の境目に当ててください。歯と歯の間は、厚生労働省の健康情報サイトが示すとおり、すき間の小さい所はデンタルフロス、すき間のある所は歯間ブラシで清掃します。
コーヒーや紅茶など色の濃い飲食や喫煙は表面の着色につながるため、気になる着色は早めにご相談ください。歯ぎしりや食いしばりを指摘された場合も、歯科医師に相談しましょう。
では、定期検診はどのくらいの間隔で受ければよいのでしょうか。英国の公的な診療指針は、次の受診までの間隔を一人ひとりの口の状態とリスクで決め、成人では3か月から24か月の範囲としています。
当院でも、お口の中の状況をみて、患者さんにあったメンテナンス間隔をご提案しています。検診ではスケーリング(歯石の除去)、PMTC(歯科衛生士による専用器具でのクリーニング)、ブラッシング指導を行いながら、今の修復物の状態と、ご自身に合った間隔を確かめてください。
欠けた・変色したときの補修とやり直しの時期

欠けや変色が出ても、全部をやり直さずに、欠けた部分を足したり表面を磨き直したりする補修で対応できる場合があります。
補修とやり直しは何が違うのでしょうか。補修は欠けた部分を足したり、表面や境目を磨き直したりする処置で、やり直し(再修復)は修復物を外して詰め直す処置です。やり直しのたびに周りの健康な歯も削るため、繰り返すほど歯が小さくなり、歯の寿命を縮めかねません。
日本歯科保存学会の診療ガイドラインは、境目の着色や不適合がある修復物には、健全な歯をより多く残せる補修を推奨しています。境目に虫歯がある場合も、虫歯を確実に取り除けて操作が難しくなければ補修を勧めており、こちらは委員会の合意による推奨です。
部分的な欠陥のある詰め物50本を補修とやり直しに分けた10年間の臨床試験でも、2つの経過は同程度でした。症例数が少ない研究である点には注意が必要です。
当院のダイレクトボンディングは、欠けや変色があっても必要な部分だけ修復しやすい治療です。補修で済むかやり直しが必要かは診査で歯と修復物の状態を確かめて判断し、費用は補修の範囲によって変わるため相談の際にご確認ください。
欠けたり取れたりしたときは、破片を捨てずに持参し、欠けた側で硬い物を噛まないようにしてください。市販の接着剤で付けたり、とがった部分を自分で削ったりせず、しみる・痛むといった症状があれば早めに受診してください。
セラミックとの寿命の違い
セラミックとの寿命の違いは、数字の大小よりも、削る量と、欠けたときに足して補修しやすいかにあります。同じ歯・同じ条件で比べた研究ではないため、数字は目安として見てください。
歯にかぶせるセラミックのかぶせ物を調べた67研究の系統的レビューでは、5年生存率が素材別に92.1〜96.6%でした。歯の表面に薄いセラミックを貼るラミネートベニアの13研究のメタ分析では、中央値9年の観察で累積生存率は89%でした。
研究の数字以外の違いをまとめると、次のとおりです。
| 比べる点 | ダイレクトボンディング | セラミック |
|---|---|---|
| 歯を削る量 | 抑えられる | 歯の周りや表面を削って作る |
| 欠けたとき | 足して補修しやすい | 作り直しになることがある |
| 色の変化 | 着色や変色が起こることがある | 少ない |
当院ではセラミックの被せ物もご提案できますので、歯の状態とご希望に合わせてご相談ください。
当院のダイレクトボンディングの費用と長く使うための取り組み
当院のダイレクトボンディングは自由診療(保険適用外)で、費用と通院回数は次のとおりです。
| 項目 | 内容(費用は税込) |
|---|---|
| 前歯の費用 | 1歯110,000円 |
| 奥歯の費用 | 33,000円〜77,000円 |
| ダイレクトブリッジ(歯が1本ない部分を補う治療)の費用 | 220,000円〜330,000円 |
| 通院回数 | 基本的に1回 |
| 期間 | 1日が目安 |
治療は複数のコンポジットレジンを使い分け、色や透明感を整えながら歯に直接盛り足して行います。通院回数は基本的に1回、期間は1日が目安ですが、事前準備と後日の確認・修正はこれに含まれないため、日程は相談の際にご確認ください。
主なリスクは、歯の形やかみ合わせを元通りにする治療ではないこと、新しいかみ合わせに慣れるまで時間がかかることがあること、強い衝撃がかかると割れる可能性があることの3つです。治療前にはメリットだけでなくデメリットもご説明し、納得していただいてから始めます。
保証の有無や条件は医院によって異なるため、気になる場合は治療を始める前にお尋ねください。
当院では拡大鏡やマイクロスコープで細かな部分を確認しながら、健康な歯をできる限り削らずに治療しています。お口の中の写真も治療記録として残しているため、次の検診で境目の着色や欠けの変化を見比べられ、補修の時期を判断する手がかりになるでしょう。
よくある質問
ダイレクトボンディングは何年もちますか?
一律の年数では決まりません。海外のメタ分析では前歯の詰め物の90〜95%が10年たってもやり直しをせずに済んでいましたが、部位やかみ合わせ、むし歯のリスクで変わり、個人差があります。
ダイレクトボンディングは10年後どうなりますか?
表面の着色やすり減り、小さな欠けが出ることがあります。欠けや着色は部分的な補修や研磨で対応できる場合があるため、定期検診で小さいうちに見つけることが大切です。
ダイレクトボンディングは変色しますか?
樹脂の材料のため、長く使ううちに表面の着色や色の変化が起こることがあります。当院では保険のコンポジットレジンより変色しにくい素材を使っていますが、セルフケアと定期的なクリーニングが前提です。
ダイレクトボンディングが欠けたらどうすればよいですか?
破片を捨てずに持参し、欠けた側で硬い物を噛まずに早めに受診してください。小さな欠けであれば、欠けた部分だけを足す補修で対応できる場合があります。
ダイレクトボンディングは虫歯になりますか?
樹脂そのものは虫歯になりませんが、修復物と歯の境目の自分の歯が虫歯になることがあります。境目に毛先を当てて磨き、歯と歯の間も清掃したうえで、定期検診で確かめてください。
ダイレクトボンディングのご相談ははまさき歯科クリニック こども矯正歯科へ
前歯のすき間や形、変色や欠けでダイレクトボンディングを検討している方、以前入れたダイレクトボンディングや白い詰め物に欠け・変色・段差が出てきた方は、お気軽にご相談ください。何年も検診を受けていない方も、今の状態を確かめるところから始められます。
相談・予約はWEB予約のほか、LINEやお電話でも受け付けておりますので、ご都合のよい方法をお選びください。
診療時間は月・火・木・金が9時〜13時と14時〜18時(最終受付17時30分)、土曜が9時〜14時30分(最終受付14時)です。休診日は水曜・日曜・祝日ですが、祝日のある週の水曜は診療しています。
当院はみよし市三好町夕田81、莇生原(あざぶはら)交差点より東にあり、駐車場は20台分ございますので、お車でお越しください。
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